83歳、余命2カ月だった彼女が最期に味わった奇跡 祖母の家で孫2人が挙げた「家族だけの結婚式」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

83歳になる女性・香山さん(仮名)の娘さんからの依頼だった。詳しく話を聞いてみると、「長男・次男の2人の兄弟が奇跡的にも同時期に結婚が決まり、合同で結婚式を挙げることになった」という。

だが、時期的にコロナ禍ということもあり、結婚式場で挙げるべきか、一家の間で悩んでいた。そこで新郎新婦たちが、「やっぱり思い出のある祖父母の自宅で結婚式を挙げたい。おばあちゃんに一番に喜んでもらいたい」と思いを固め、「かなえるナース」に相談を持ちかけたとのことだった。

私もメーキャップしてもらえるかしら?

香山さん一家の熱い思いを受け取り、「自宅だからこそ味わえる最高の式を演出しよう」と奮起した前田さん。2週間後に決まった式の本番まで時間がないため、急ぎ香山さんの自宅に打ち合わせに出向いた。すると、想像以上にご本人が元気そうなことに驚いたという。

「歩くと息切れはするようですが、背筋もピンとしていて、話す声もハキハキとされていました。お話を聞くと、長い間、NPO団体の代表として国際協力の仕事をされていたとのこと。堂々としていてどことなく存在感があるのは、長年トップの立場で活躍されていたからかと合点がいきました」

お孫さんたちの結婚式を間近に控え、うれしそうな様子の香山さん。打ち合わせの中で、思わぬ一言が飛び出した。

「結婚式当日は、私もメーキャップしてもらえるのかしら?」

その一言を聞いて、「ご本人にとって身なりを整えることはとても大事な望みなのだ」と理解した前田さんは、当初の計画にはなかった、香山さん専属の出張ヘアメイクを提案。しかも、花嫁だけではなく、香山さんにもブーケを持ってもらい、より華やかな装いで式に出席してもらうことにした。

打ち合わせ時は元気そうに見えた香山さんだが、がんは着実に進行していた。日に日に弱っていく中、待ちわびていた結婚式当日を迎えることができた。

香山さんの念願でもあった、メーキャップ。美しさが増すごとに元気もみなぎってきた(写真:かなえるナース提供)

自宅での開催とはいえ、1日がかりのイベントとなる。香山さんの体力を温存するため、メイクはベッド上で寝ながら行うことに。ベースメイクで肌のツヤと血色が増すごとに、香山さんの表情がいきいきとしていく。

グレイヘアをふんわりとセットし、色鮮やかなマゼンダ色のリップをつけると、病の影を微塵も感じさせないほど美しいマダムへと変貌した。

次ページドレスアップした祖母との感動の対面
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事