"中長期視点"経営の壁「過激な短期投資家」対処術 課題解決と利益を両立させるために必要なこと

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4種類の乗員のほかにも、「マルチステークホルダー(NGOや一般の消費者など)」が、2人目の乗員である「規制」の陰に腰掛けている。この人たちの価値観はさまざまだが、近年、サステナビリティへの意識が急速に高まっている。

この「マルチステークホルダー」は、世論形成を通じて「規制」に影響を与えるだけでなく、企業(御者)に直接、要請を突きつけ始めている。環境や人権に関して問題が見つかれば、SNSでの発信や不買運動などを通じて企業を突き上げることも辞さない。

御者である企業経営者から見ると、かつては「短期投資家」から急き立てられながら疾走していたが、今は、あらゆるステークホルダーが声を上げ始めていて、それに耳を傾けなくてはならない状況になっている。その意味で、短期投資家の影響力は弱まっていくだろうというのが、この質問に対する答えだ。

マルチステークホルダーの方向性は一定程度予想できる

短期投資家以外にも御者に口を出す人は多く、その主張も多種多様だが、現在直面している環境・社会課題を考えると、「規制」や「マルチステークホルダー」がどのような方向性で動いていくかは一定程度予想できる。

サステナビリティに関する未来の動向は、「長期的構造変化であり、予測可能である。したがって、経営者はそれに備えなくてはならない」と繰り返し述べてきた。しかし、大きな変化の方向性は予測可能であっても、その変化がいつ訪れるのか、どれくらいの規模で発生するのかは、簡単には予測できない。

未来のシナリオを考える際には、それが原因で状況が大きく変化する「変数」が大小いくつも存在する。サステナビリティの未来を左右する主要な変数としては、①規制・ソフトロー、②人々の価値観、③テクノロジーの3つが考えられる。

この3つの変数がどう動くかによって、サステナビリティ課題がビジネスに与える影響の規模や顕在化するスピードが変わってくる。

例えば、①規制・ソフトローの動向の読み方について見てみよう。

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