ロンドン「女王陛下の鉄道新線」で何が変わるか 都心横断「エリザベス線」開業、新たな大動脈に

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ロンドン交通局の代表に当たるアンディー・バイフォード・コミッショナーは「エリザベス線は公共交通網を劇的に改善し、所要時間の短縮や輸送能力の増強を実現する。広々としてすっきりした新駅、連結部分を通行できる『ウォークスルー車両』(旧型地下鉄車両は車両間の通り抜けができない)となったことによって、利用者の機動性に変化が訪れるだろう」「新しい鉄道は、ロンドンとイングランド南東部に住む人々の生活と移動手段の変化に貢献する」とその意義を強調する。

エリザベス線で運行する345形電車(筆者撮影)
エリザベス線車両の車内(写真:(c) Crossrail Ltd)

だが、コミッショナーによる力強い発言をよそに、ロンドン交通局は厳しい財政難に陥っている。

5月現在のロンドンの全公共交通機関の利用者数はコロナ禍前の72%にとどまっており、コロナ禍前の80%まで回復するのは2024年度になるという予測もある。

一方、毎年補正される運賃は、インフレ率上昇に合わせて引き上げられるが、現在のガス・原油などエネルギー価格の上昇もあり、23年度の運賃は確実に大きく上がる。その結果、自転車利用に切り替える通勤者が増加するなど、それなりの旅客離れが予想される。

バス路線削減、地下鉄減便の可能性も

さまざまな要因を受け、2023年度の旅客収入は昨年時点の予想より1割程度減るとも言われており、収支の健全化への道のりはまだ遠そうだ。

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ひとまずエリザベス線の営業運転は始まったものの、6月下旬には交通局の財政状況に関するレビューが行われる予定で、「収益化改善のため大ナタを振るうべき」という提言もある。抜本的な改革のために、バス路線の約18%の整理・削減が求められそうだ、との声もある。

エリザベス線は、市民はもとより、コロナ禍後のロンドンを訪れる観光客らにとって便利な乗り物として評価されうるだろう。しかし、その一方で交通局の経営難から「2割近くのバス路線廃止・地下鉄は減便」というプランも取り沙汰される。新線開業に沸く中、将来のロンドンの公共交通網についてどのように見直しが行われるかも、今後の焦点となるだろう。

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