不動産会社主導の「公園再開発」に欠けている視点 神宮外苑“幻の再整備計画"のキーマンを直撃

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――神宮外苑の再整備について、現在の計画が立ち上がる前に提案された2003年の報告書の作成に携っています。どのような考え方で取りまとめたのでしょうか。

神宮外苑のオーセンティシティ(真正性、筆者注)をいかに継承するかを重視した。同時に、これから100年、神宮外苑をどう管理・運営していくのかも考慮しながらまとめた。

1999年に東京都知事に就任した石原(慎太郎)さんは、明治神宮に対する理解が深かったので、報告書の提案も受け入れてもらえると考えていた。ただ、私は2006年に出身地の熊本に戻って熊本県立大学理事長に就任したので、その後の経緯はよく知らない。

(筆者注)オーセンティシティとは、近年、都市開発においても重視されてきた考え方で、その地域の歴史や人々の思いを大切にして魅力あるまちづくりに取り組むこと。

公園・緑地に「開発の手」

――報告書には、神宮外苑と内苑を結ぶ「裏参道」を整備し、周辺の施設を並木道や街路樹でつなぐ「東京セントラル・パークシステム構想」を盛り込んでいます。なぜ、これを盛り込んだのですか。

委員会では、これからの東京の都市づくりに何が必要かを議論し、それは欧米の都市に比べて大きく見劣りする公園だろうという結論になった。

(パークシステムはアメリカで誕生した公園整備の考え方だが)日本でも注目されていて、明治神宮内苑・外苑と代々木公園を中心としたウエスト(西)と、皇居や日比谷公園を中心としたイースト(東)に分けて全体像を描いた。

以前から神宮外苑だけでなく、日比谷公園や芝公園など都心部の大規模な公園・緑地には絶えず開発の手が及んでいた。パークシステム構想を盛り込んだのは、これが神宮外苑だけの問題ではないと伝えたかったからだ。

――国や地方自治体の財政が厳しい中、公園・緑地の管理はどうあるべきでしょうか。

これからの時代は、公共だけで公園・緑地を管理・運営するのは難しく、民間の力も活用する必要がある。すでに2017年からPFI(公募設置管理)制度も導入されたが、重要なキーワードは公園の『外部経済』 で、これにどう取り込むかだろう。

公園・緑地はそこを利用する市民だけでなく、周辺エリアを含む様々な人たちにも便益・利益・恩恵を提供している。例えば、隣接するホテルにとってはパークビューを楽しめる客室の料金を高く設定することも可能で、これが外部経済だ。

公園から得られる収益だけでなく、外部経済の便益・利益をファンドとして集めて、公園・緑地の整備に充てたり、新たな公園や緑のネットワークを生み出すのに使ったりするという発想が必要だろう。

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