公立学校教員の「働かせ放題」合法化する、理不尽な法律「給特法」変えるカギ 教育の質に関わる社会課題として向き合うべき
給特法改正後のゴールは、教員への多額の残業代支払い(=長時間労働放置)ではない。むしろ、残業代支払いという予算支出を避けるための、本気の業務改善などによる労働時間削減が期待される。要するに給特法改正のゴールは、残業代の支払いを避けるための業務改善による労働時間削減だから、多額の予算が支出されるという推計で長時間労働放置を前提とした制度設計を議論すべきではないのだ。
仮に業務改善に時間を要することなどから一定の予算支出は避けられないとしても、ほかの公務員などとの均衡も直視されねばならない。例えば、同じく予算が支出される自衛官・消防士・警察官に残業代が支払われるのに、なぜ教員には支払われないのか。この不公平・不均衡を直視すれば、やはり予算支出を「壁」と考えるべきではないのだ。
仮に教員の残業代が多額になっても、これを最終的に負担するのは、財務省でも政治家でもなく納税者である私たち市民だ。
そして現状、教員の長時間労働による無賃労働のサービスを享受し、多くの業務負担を学校教員に要求してきたのも、人手不足・疲れ果てた教員による教育の質低下による影響を被るのも、私たち市民だ。
給特法の問題は、教員の残業代という教育界の問題ではなく、教育の質に関わる社会全体の課題なのだから、きちんと訴えれば必ずひとごとではない自身の問題と受け止めてもらえ、給特法も変えていけるはずである。
そのためにも、一人ひとりの教員が自ら、主体的に閉ざされがちな学校・教員職場の実態を明らかにするよう、声を上げていくことも求められている。
(注記のない写真: Ushico / PIXTA)
執筆:弁護士 嶋﨑量
東洋経済education × ICT編集部
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