公立学校教員の「働かせ放題」合法化する、理不尽な法律「給特法」変えるカギ 教育の質に関わる社会課題として向き合うべき

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では、どうすべきか。長時間労働是正のために、まず必要なのは教員の労働時間を厳密に把握することだ。労働時間を正確に把握しなければ、客観的な勤務実態(=長時間労働)を社会に突きつけ、実態を踏まえた法改正の議論も世論喚起もできない。

ただし、これが難問だ。文部科学省での議論でも、給特法が要因となり労働時間把握が困難であることが指摘されてきた。というのは、労働時間を把握するには、忙しい教員に負担がかかり、しかも負担に見合う見返り(残業代)もない。むしろ管理職から、長時間労働について注意指導を受けるリスクもあり(かといってやるべき仕事は減らない)、過少申告するように管理職が指導するケースも報じられている。さらに、教員の特徴として、持ち帰り・休憩なしの労働の蔓延など、労働時間の把握が難しい労働実態もある。

こうした状況を克服すべく、2019年の給特法改正で客観的な労働時間把握を義務づけた上限ガイドラインが指針へと格上げされ、法令上の根拠が付与された。

具体的には、教育委員会が講ずべき措置として、教育職員が在校している時間は、ICTの活用やタイムカードなどにより客観的に計測し、校外で職務に従事している時間もできる限り客観的に計測することが求められるようになった。また指針では、原則として残業時間(正確には在校等時間と呼ばれ、基本的に持ち帰り労働は含まれない)を月45時間とする残業の上限規制も導入された。

しかし、現状はといえば、労働時間の厳密な把握もないし、残業の上限規制も罰則がなく、野放し状態だ。やはり働かせ放題を合法化する給特法を放置し、長時間労働の是正をするのは無理なのだ。

給特法の改正、「予算の壁」は本当か?

嶋﨑量(しまさき・ちから)
弁護士
1975年生まれ。神奈川総合法律事務所所属、ブラック企業対策プロジェクト事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、反貧困ネットワーク神奈川幹事など。主に働く人や労働組合の権利を守るために活動している。著書に『5年たったら正社員!? 無期転換のためのワークルール』(旬報社)、共著に『#教師のバトン とはなんだったのか 教師の発信と学校の未来』『迷走する教員の働き方改革 変形労働時間制を考える』『裁量労働制はなぜ危険か 「働き方改革」の闇』『ブラック企業のない社会へ 教育・福祉・医療・企業にできること』(いずれも岩波ブックレット)、『ドキュメント ブラック企業ー「手口」からわかる闘い方のすべて』(ちくま文庫)など
(写真:嶋﨑氏提供)

給特法改正を訴えると、必ず指摘されるのが「予算の壁」だ。給特法を変え残業代を支払うと多額の国家予算がかかり、財政難の中で教育予算の支出は難しいと指摘されるのだ。しかし、多額の国家予算がかかることを前提に議論するのは、法制度の趣旨からも誤っている。

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