進化を続ける囲碁AI。それは一般社会にどういう影響をもたらすのか。プロ棋士の大橋拓文七段に聞いた。
2016年、囲碁界に衝撃が走った。グーグル傘下の人工知能研究所DeepMindが開発した「AlphaGo(アルファ碁)」が、世界のトップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏と五番勝負を行い、4勝1敗で完勝したのだ。「囲碁は複雑なゲームのため、AIが囲碁で人間を超えるのは10年先」と言われていたこともあり、世界トップ棋士の敗戦に多くの囲碁関係者は動揺した。
しかし、囲碁界はその後落ち着きを取り戻し、囲碁AIの特徴をとらえ、棋力アップにつなげる動きが広がっていった。今や井山裕太本因坊や一力遼棋聖を初めとする国内トップ棋士の多くが、囲碁AIによる研究・学習を取り入れているとされる。
アルファ碁に続いて中国のテンセントが囲碁AIを開発するなど数多くのソフトが投入され、プロだけではなく一般の囲碁ファンが使いやすいソフトも浸透している。
囲碁AIはどこまで進化しているのか。それは一般社会の人にとってどのような意味を持つのか。囲碁AIに関する多数の著書があるプロ棋士の大橋拓文七段に聞いた。
プロ棋士が受けたショック
――囲碁AIソフトは今、どこまで進化しているのでしょうか。
すごく強くなっている。2016年にディープマインドのアルファ碁がイ・セドルさんに完勝した。これはわれわれプロ棋士もショックだった。翌2017年にディープマインドは囲碁AIの新しいバージョンを投入し、「人類最強」とまで言われる中国の柯潔(カ・ケツ)さんに勝った。
現在は多くの囲碁AIが登場しているが、これらは基本的にはアルファ碁の2017年のバージョンを基本としていると言っても過言ではない。ディープマインドがアルファ碁に関する論文を出して、開発会社はこの論文をもとに工夫を重ねている。
――囲碁AIにはレベル(強さの違い)があると聞きました。
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