でも、私立の先生って皆さん熱い思いにあふれているんですよね。長時間仕事をしていても、なぜ私立の先生は前向きで、公立の先生が疲弊しているのか。それは、やりたいことをやれているかどうかの違いなんじゃないかと思います。私自身、やりたいことは時間に関係なく動けるので、働き方改革って何なのかなと考えてしまうことがあります。
残業すると管理職と面接しなければいけないから、教員たちがタイムカードを改ざんして残業している自治体もあると聞きます。それを知らずに「うちは残業がない」と思っている管理職もいるそうで、厳しい時間管理もどうなのかなと。
堤先生 僕も教材作りが趣味なので、わかります。定時帰宅を強制されるのではなく、自分で選択できるといいですよね。
九貫先生 根性主義者のマインドセットは重要ですが、一方で、皆さんがおっしゃるように一律に時短で定時に帰らなければならないという方針が逆にプレッシャーになることはあると思います。もっと仕事をやりたい人もいれば、そうじゃない事情の人もいる。そのあたりの多様性や柔軟性が確保される環境になっていくといいなと思います。
順子先生 公立は意味があるのかと思うことが本当にいっぱいありますよね。先ほどの教育計画のお話もそうですし、学力テストの多さなども問題です。個人が働き方を変えるには限界があるので、校長や教育委員会も着手できることはやってほしいと思います。
田中先生 教員免許更新制の廃止は、免許を失効しなくて済むのでよかったですよね。僕たちは研修を受ける必要はない立場ですが、研修の見直しについてはどう捉えていますか。
九貫先生 教員の学びも「個別最適な学び」に近いスタイルで方向性が示されたことは、いいなと思いました。
田中先生 民間講座も認めたらどうかという期待の声が上がっているので、九貫先生など力がある方から学べる機会も広がるといいですよね。
九貫先生 4年ほど前、都教委や文部科学省にコミュニケーショントレーナーとして講座を持たせてほしいと問い合わせたのですが、参入は協会の後ろ盾があっても個人は難しいとのことでした。大学の所属や組織の正式な推薦などが必要らしく、そのあたりも変わるといいですね。
教育現場の活性化には「採用の柔軟化」や「副業」も必要だ
田中先生 研修だけでなく採用も変わっていくべきだと思いませんか。例えば教育現場と社会の接点が少なく、人材の行き来も活発ではない現状があります。
九貫先生 人材の流動性は高めたほうがいいと思います。それで働き方の問題が直ちに解決するわけではないですが、いろんな人たちの目が教育現場に入ってくるのはよいこと。また、仕事をアウトソーシングして社会の力を借りていくことも必要かなと思います。
堤先生 流動性の観点でいくと横浜市は人材が豊富で魅力的だと思います。正規の中途採用は、社会人がめちゃくちゃ多い。なぜなら試験が受けやすいから。僕も社会人枠で受けたのですが、教職教養試験はなく、指導案の作成、小論文と面接、模擬授業のみでした。
田中先生 堤先生は大学院を出た後、2年間の青年海外協力隊の活動を経て横浜市の教員になったんですよね。10年以上も前から横浜市は試験のハードルを下げていたのですね。
堤先生 横浜市は規模が大きいので、試験を受けやすくして流入を増やしたのではないでしょうか。その結果、中途採用者が教務主任や管理職になるなど多様性があってすごくいい。僕がいた学校では、元青年海外協力隊員が2人、帰国子女が1人、看護師から養護教諭になった人も。アパレルショップの元店長は、女子高生相手にマネジメントをしてきたから、全然怒らないしモチベーションを上げる一言とかめちゃくちゃうまかったですね。