「母になったことを後悔」は精神疾患の兆候なのか 子を愛しているが、「母子」を超えた関係求める

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たしかに仕事やキャリアのために子供を持つことを諦める女性もいますが、「女性が子供を持たないのはキャリアを優先したからに違いない」とは言い切れません。オルナ・ドーナト氏は研究を進めていく中で、キャリアも子供も希望していない女性に触れています。

「女性にとって母であること自体が耐え難い」という考えは、ありえないと認識されがちだ。なぜなら、それこそが女性の「存在理由」とされるからだ。そのため、母の後悔に対する一般的な反応として、生活の困難、特に子育てと有給の仕事のはざまで苦しんでいるのが理由だと想定するのである。この仮定から、さらに解釈を広げると、女性には子育てと家の外での有給の仕事の2択しかないということになる。母になりたいか、キャリアウーマンになりたいかのどちらかなのだ。
しかし、私の以前の研究で、母になりたくない(母ではない)女性について学んだのは、多くの女性が「キャリア」に、母になることと同様に違和感を持っていることだった。その多くは、子ども時代や10代の頃から、母になりたくないと感じていた---つまり、母であることが仕事やキャリアに与える影響を考える前から、そのような感情を持っていたのである。(275~276ページより)

制度が整えば、母になることを希望する?

子供のいる自分という存在に基本的には満足しているけれど、育児や家事に非協力的な夫や、仕事と子育ての両立に悩んでいる女性の場合、確かに配偶者や子育て支援の制度が改善されることによって、「母親でいること」が幾分か楽になります。

しかしこれは「母親になりたくない」または「母親になりたくなかった」女性には当てはまりません。趣味や自分の時間が大切で、子供を産むことに価値を見出せない女性は確実に存在します。母親になった後に「子供がいない私のほうが、自分らしく生きられた」と気づいてしまう女性もいます。しかしそういった発言は「公の場で言ってはいけないこと」とされ、世の中で長らくタブー視されてきました。

私の以前の研究では、参加した女性のほとんどは、たとえ自分が地球上で最も裕福な女性であり、育てるのに必要な助けをじゅうぶんに持っていたとしても、子どもを持つことを望まなかった。とにかく母になりたくないからである。
同様の結果は、私が2012年にオンラインフォーラム「子どもを望まない女性たち」の参加者へ投げかけた質問の回答にも見られた。母になることを検討してもよい条件があるのかとたずねたところ、参加者の大半は、母になりたい条件はないと答えた。言いかえれば、条件にかかわらず、非母(ノンマザー)でいることを望むのだ。(279ページより)
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