景気刺激効果薄い金融緩和に苦悩の中国人民銀行 ゼロコロナ政策と不動産規制が景気回復の重しに
中国人民銀行(中央銀行)は利下げや銀行への資金注入を実施したにもかかわらず、融資押し上げに苦戦している。
新型コロナウイルスの感染拡大で上海や深圳などの大都市がロックダウン(都市封鎖)下にある中、雇用と収入に関する不安が広がり、企業や消費者は債務を増やしたくないと考えていることがうかがわれる。不動産市場の低迷で不良債権が増加し、利益を圧迫しているため、銀行も融資拡大に消極的だ。
人民銀にとって難しい状況だ。金融引き締めを進める米国とは対照的に、人民銀は今年2回目となる利下げを今月実施する可能性がある。多くのエコノミストは人民銀が預金準備率も引き下げると予想している。
問題は、「ゼロコロナ」戦略を続ける当局のオミクロン株封じ込めに向けた制限措置で消費者は不安を抱いており、新たな刺激策が実施されても効果が及ぶのは銀行までで、実体経済には浸透しない可能性があることだ。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の中国担当チーフエコノミスト、喬虹氏は「銀行間市場には潤沢な流動性があるが、信用需要は極めて弱く、銀行の融資拡大につながりにくくなっている」と指摘。信用需要が極めて低水準にあるため、金利調整と預金準備金引き下げは中国にとって最も効果的な金融政策ではないとの見方を示した。
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中国指導部は3月前半に、今年の国内総生産(GDP)成長率目標を5.5%前後に設定。その後、ロシアのウクライナ侵攻がエネルギーコストを押し上げたほか、新型コロナ感染拡大とロックダウンの影響で、エコノミストは相次いで予想を下方修正した。中国国務院は支援強化を打ち出している。
昨年2回の預金準備率引き下げと今年1月の利下げにもかかわらず、中国の国内総生産(GDP)に対する新規貸し出しの伸びを示す「クレジットインパルス」は2021年の急減速からまだそれほど回復していない。
人民銀は問題を認識しており、3月末に「金融政策の伝達メカニズムの目詰まり解消」を進めると表明した。
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中国銀行インターナショナルのチーフエコノミスト、徐高氏は昨年の政府の締め付けでなお低迷している不動産市場が信用フロー回復の鍵だと分析。「主な問題は信頼感の欠如だ。銀行が住宅ローン金利を引き下げても消費者が住宅購入とローン活用に消極的なのは、物件が完成せず引き渡されないことを懸念しているためだ」と語った。
原題:China’s Monetary Easing Runs Into a Worsening Virus Outbreak(抜粋)
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著者:Bloomberg News
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