『ヒロシマを暴いた男 米国人ジャーナリスト、国家権力への挑戦』 『ベトナムを知れば見えてくる日本の危機 「対中警戒感」を共有する新・同盟国』ほか
被爆はいかに報じられたか 実名報道の持つ底力も示す
評者/関西大学客員教授 会田弘継
広島への原爆投下から約1年後、米誌『ニューヨーカー』が全誌面を割いて一括掲載したジョン・ハーシーのルポ「ヒロシマ」は、当時の米当局による厳しい報道管制の中、被爆の惨状を初めて詳細に世界へ伝えた。歴史的な報道であり、その後の核戦争を防ぐのに大きな役割を果たしたともいわれる。
本書は、報道管制をくぐり抜けて広島の被爆者らに会い、彼らの体験を書き記したハーシーと、検閲や世論の反発への懸念にもめげず特集号発行に踏み切った編集者らの軌跡をたどる。報道への信頼が揺らぎがちな今、報道の自由と言論活動の大切さを再確認する意味で、広く読まれることを期待したい好著だ。
1945年晩秋、ハーシーと『ニューヨーカー』編集者は会食し、同誌と通りを隔てて社屋のある有力紙ニューヨーク・タイムズの向こうを張る、被爆地広島の実態を描くルポを計画する。同年9月、同紙記者は他メディアとともに米軍手配の広島視察に参加、1面記事で被爆生存者を苦しめる不可解な病状に触れた。だが、1週間後の記事でそれを日本の宣伝だと否定。米政府の圧力を感じさせた。
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