『資本主義だけ残った 世界を制するシステムの未来』 『バリューサイクル・マネジメント 新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方』ほか
バイデンの改革不発なら中国に似た権威主義的体制に
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
著者はグローバルな視点で経済格差を分析する著名な研究者だ。前著『大不平等』では、グローバル化で意図せずして結託した先進国の富裕層と中国など新興国の中間層が最大の勝者となり、先進国の中間層が最大の敗者となったことを「エレファントカーブ」で示し、話題をさらった。情報通信革命をテコに、グローバル企業が生産拠点のオフショアリングを進め、それが中国経済の発展を促すと同時に、先進国から中間的な賃金の仕事を奪ったのだ。
今回は、高度にグローバル化する資本主義の強欲が際限のない経済格差を生むことを警告する。米中対立は激化し、米国は中国を怪物呼ばわりするが、生みの親はグローバル資本主義にほかならない。米国も社民主義的資本主義からリベラル能力資本主義へと醜く変容し、腐敗と格差の点では、中国などの権威主義的資本主義と大差はないと断ずる。
まず先進国では企業の利潤追求で、社会保障が脆弱化する。戦前の古典的資本主義と異なるのは、富裕層が資産所得だけでなく、高度な人的資本を武器に、多額の労働所得も稼ぐ点だ。さらに同類婚の増加でスーパーカップルに富は集中する。子弟の教育を通じて格差は再生産され、開かれた社会は失われつつある。
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