大規模財政が危機緩和 米国は所得再分配を選択
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
世界恐慌に対応すべくケインズが『一般理論』で創始したのがマクロ経済学だ。ケインズ以前は、賃金が割高で価格調整スピードが遅いから失業が発生すると考えた。ケインズは、原因は労働市場ではなく資本市場にあると論じた。投機の行き過ぎなどで資本市場が動揺し、企業が投資を抑制するから、総需要が低迷し失業が発生する。
今般、読みやすい新訳が出た。コロナ下でケインズの教えが生かされたのかを確認するのに、格好といえよう。
ショックが襲うと、人々の流動性需要が極度に高まり、市場金利は跳ね上がって、強いストレスが経済に及ぶ。リーマンショックの教訓もあり、米国を中心に世界の中央銀行が協調し、自国通貨だけでなく、ドル資金の大量供給も行われた。ケインズの時代に比べ、中銀の能力は高まり、資本市場の動揺がコロナ危機を増幅する事態は避けられた。
ケインズ政策といえば財政政策と捉える人も多いが、財政政策は副作用が強いため、できる限り金融政策で対応すべきだと近年まで考えられていた。ただ、超低金利が常態化すれば、金融緩和余地は限られる。リーマンショックの頃から徐々に変化していたが、コロナ危機で大規模な財政政策が世界的に発動され、「大きな政府」に向かっている。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待