有料会員限定

『ミンスキーと〈不安定性〉の経済学 MMTの源流へ』 『フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔』ほか

✎ 1〜 ✎ 303 ✎ 304 ✎ 305 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

「安定性が不安定性を生む」 経済改革考える際の基盤に
評者/北海道大学大学院教授 橋本 努

『ミンスキーと〈不安定性〉の経済学 MMTの源流へ』L・ランダル・レイ 著/横川太郎 監訳/鈴木正徳 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]Larry Randall Wray 1953年生まれ。米パシフィック大学卒業後、ワシントン大学セントルイス校で修士号と博士号を取得。同校時代、ミンスキーに師事。現在、米バード大学教授。現代貨幣理論(MMT)の旗手として知られ、著書に『MMT現代貨幣理論入門』など。

2008年の世界金融危機のとき、英国のエリザベス女王は「なぜこの危機を誰も予見できなかったのですか」と素朴な疑問を呈した。当時支配的だった「効率的市場仮説」などのマクロ経済理論はこの危機を説明する力を持たず、経済学者たちの威信は低下した。

だが、一部の経済学者は、この金融危機が「ミンスキー・クライシス」であると見抜いた。1996年に世を去ったミンスキーが生きていれば、英女王に自らの理論の正しさを説明したであろう。

本書はミンスキーの弟子によって書かれた簡易な入門書であり、異端経済学者の全貌を鮮やかに伝えている。

ミンスキーの経済哲学は、「安定性が不安定性を生み出す」という言葉によって表される。例えばある規制の下で金融市場が安定すると、プレーヤーたちは規制の抜け穴を見つけたり、イノベーションを生みだしたりする。あるいは金融危機の際に政府が「最後の貸し手」として助けてくれるとなると、プレーヤーたちはいっそうリスクを取るようになる。結果として金融市場は脆弱になるというのがミンスキーの説明である。

関連記事
トピックボードAD