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安倍政権が電撃退陣する構造的要因 新型コロナウイルス危機以降の総括

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辞任の引き金は健康問題だとしても、首相は自らが抱えた絶対的矛盾に耐え切れなくなっていた。

突然の辞意表明に日本全国で驚きの声が上がった(写真は8月28日午後の東京都内)(新華社/ アフロ)

8月28日の安倍晋三首相の突然の辞意表明に驚いている。この7年8カ月の安倍政治についての本格的な総括は改めて行いたいが、ここでは新型コロナウイルス危機以降の安倍政権について批判的な総括を行っておきたい。

5月に緊急事態宣言を解除した記者会見で、安倍氏は「日本モデル」の成功を誇示した。しかし、日本モデルなどというものはない。死者数が少ないのは東アジア各国に共通した現象であり、対人口比の数字を比較すれば、日本は中国や韓国に劣っている。東京五輪を予定どおり開催することにこだわって対応が遅れたうえに、一斉休校やアベノマスクの配布など、的外れの政策で国民に迷惑をかけ、税金を無駄に使った。事実に関する正確な情報の確保、情報の公開、科学的知見の尊重など、近代国家の指導者としての基本動作ができていなかったといわざるをえない。

このタイミングでの首相の退陣は、太平洋戦争敗北間近になっての東条英機首相の退陣と重なり合う。無意味な戦争で国を滅ぼした指導者が持っていた欠陥は、次のようなものである。事実を客観的に認識できない(大本営発表や精神主義)。政策目標において現実よりも宗教的観念(国体護持、本土決戦)が優先される。希望的観測に基づいて政策を立案し、失敗しても善後策を考えない。

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