再び制限強まる黒人の権利、大統領選の帰趨に影響も
評者/ジャーナリスト 中岡 望
タイトルは63年前のキング牧師の演説の一節だが、本書は歴史書ではない。他国に対し民主主義を称揚する米国では、投票権をめぐる争いが今なお続いている。米国において投票権問題は極めて今日的な問題なのである。
奴隷制度廃止後の1870年に成立した憲法修正第15条は「人種、肌の色を理由に投票権を制限してはならない」と規定する。南北戦争後、連邦政府は「南部再建」として、南部に連邦軍を置き、黒人の公民権の保護を図った。選挙権を与えられた黒人は州議会議員選挙に立候補し、ルイジアナ州とサウスカロライナ州では州議会の過半数を占めた。
だが、連邦政府はほどなく政治的妥協から連邦軍を撤収。旧南部連合の指導者が一斉に公職に復帰した(南部復古)。白人は黒人の公職への進出に恐れをなし、「ジム・クロウ法」と呼ばれる規制で黒人を立法と行政から排除した。
黒人の公民権と投票権が回復したのは「1964年公民権法」と「65年投票権法」が成立してからだ。しかし、話はここで終わらない。その後も、黒人の投票権を制限するさまざまな試みが保守派によりなされ、現在に至っている。本書はこの公民権法と投票権法をめぐるリベラル派と保守派の“政治闘争”と“法廷闘争”を詳細に描いている。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待