過剰な富は判断力を弱める、政府支出削減が行きつく先
評者/福井県立大学名誉教授 中沢孝夫
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[Profile] Peter Temin 1937年生まれ。米マサチューセッツ工科大学名誉教授。専門は経済史で、米国の大恐慌の研究で知られる。邦訳された著書に『大恐慌の教訓』、共著に『リーダーなき経済』『学び直しケインズ経済学』がある。
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自由と平等は両立しない。一方で、金持ちがより大きな富を求める自由は、社会秩序の安定という、平等に与えられる“公共財”の存在を前提としている。
そうした社会は、基本的には中間層(暮らしが安定し子どもの教育が可能な層)の厚みによって支えられる。ところが本書によると、米国では、所得上位1%のさらに1%がそれを破壊する。彼らは「2012年の選挙で政治献金全体の四分の一以上を提供し」、「当選した下院・上院議員の全員が」その層から資金援助を受けていた、とのことである。また彼らはシンクタンクをつくって理論武装し、自分たちのための政策を立案させる。その基本は、税負担増ではなく、減税と政府支出の削減だ。もちろん、1%のうちの99%も否やはない。
では年収が3人家族で4万〜12万ドルの中間層はどうだろう。主に金融(F)、先端技術(T)、エレクトロニクス(E)の3部門(FTE)に身を置くか、少なくともフルタイムの正規雇用である人たちが該当するが、それは全体の20%に過ぎない。そして、彼らも増税は望まない。
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