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『経済政策形成の論理と現実』 『わたしはナチスに盗まれた子ども 隠蔽された〈レーベンスボルン〉計画』ほか

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批判受け入れ弱点克服、ケインズ主義の中核を提示
評者/名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰

『経済政策形成の論理と現実』野口 旭 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] のぐち・あさひ 1958年生まれ。82年東京大学経済学部卒業。88年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。専修大学経済学部教授。専門はマクロ経済、経済政策、国際金融。『アベノミクスが変えた日本経済』など著書多数。

本書は、ある経済政策の成功と失敗の分析ではなく、なぜ、ある政策アイデアが経済学者の世界のみならず社会全般に受け入れられ、現実の政策として実行されるようになったのかを分析するものだ。

保護貿易主義や、経常収支黒字が勝ちで赤字が負けという「国際競争主義」も議論されているが、焦点はマクロ安定化政策をめぐるケインズ経済学についての議論だ。多くの日本人、あるいは少なからぬ日本の経済学者は、ケインズ主義とは財政政策を用いて経済変動を小さくしようという思想だと考えていると思う。

しかし本書は、ケインズ主義とは資本主義経済の本質的な不安定性を安定化するために、政府による積極的な反循環的マクロ経済政策が必要とされるという政策思想であるとする。これがケインズ主義の中核であり、経済安定化の方策は、実証経済学の進歩によって変わらざるを得ない、ラカトシュの言う「防備帯」であるという。

経済の安定化がケインズ主義の中核であるならば、オーストリア学派、フリードマンのマネタリズム、その後継者であるルーカスの新しい古典派の中核は、市場経済は本質的に安定的であり、不安定化するとすれば、政府の誤った介入によるという政策思想と言えるだろう。

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