「平等」への「自由」の反撃煽る 英米の思想的膠着を反映
評者/関西大学客員教授 会田弘継
新反動主義と呼ばれる思想潮流の代表的論客による著作の、初めての邦訳である。原著はオンラインのブログだ。人種差別を容認するような言説もあり、危険な書である。だが、訳者らの丁寧な解説や注釈を手掛かりにして読み込めば、英米社会が直面する思想的な行き詰まりが見えてくる。
著者は英国出身だが、論じられるのは主として米国での事象だ。原著は2012年に書かれた。アフガン戦争、イラク戦争長期化とリーマン危機という難局の中で生まれた初の黒人大統領オバマが再選に挑み、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動のきっかけとなる黒人少年殺害事件が起きた年だ。
国家を企業化して互いに競わせ、人々が自由に選択できることを目指す「新官房学」など聞き慣れない概念や用語が頻出する。だが、論じられているのは、古くからの争点である「自由」と「平等」の緊張関係である。米国における平等を論じれば、黒人差別の問題にぶつかるのは必然だ。
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