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『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』 『ドキュメント 強権の経済政策 官僚たちのアベノミクス2』ほか

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社会の改善に向け意識すべき「変化に対応するコスト」
評者/名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰

『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ 著/村井章子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile] Abhijit V. Banerjee 1988年に米ハーバード大学でPhD取得。米MIT教授。専門は開発経済学と経済理論。2019年ノーベル経済学賞受賞。
Esther Duflo 仏パリ高等師範学校卒業後、1999年に米MITでPhD取得。MIT教授。2019年、ノーベル経済学賞を受賞。

世界は経済学のモデルで説明できるほど簡単ではない、というのが本書の主張だ。なぜなら現実の世界にはモデルが見過ごしている多くの要素があるからだ。であるなら、事実の発見と実証分析が重要になる。

自由貿易は究極的には経済全体に利益をもたらすが、当然、負け組と勝ち組が生じてしまう。勝ち組から税を取って負け組に配れば、誰も損をせずに経済全体で利益が上がるとわかっているが、勝ち組がそれに応じるかは分からないし、実際これまでそうしたこともなかった。

また、誰が勝ち組で誰が負け組になるのかも、経済モデルが教えてくれるほど簡単ではなかった。なぜかといえば、人々は必ずしも変化に対応できるわけではないからである。

それはなぜなのか、どうしたらいいのかについては、著者たちのノーベル賞受賞の理由となったランダム化比較試験による研究が多数引用されている。プロジェクトの参加、不参加をくじ引きで割り当てることによりプロジェクトの効果を厳密に測定する方法である。

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