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『アメリカン・トラップ アメリカが仕掛ける巧妙な経済戦争を暴く』 『荒れ野の六十年 東アジア世界の歴史地政学』ほか

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ある日突然、不条理な逮捕 法律武器に戦争仕掛ける米国
評者/東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望

『アメリカン・トラップ アメリカが仕掛ける巧妙な経済戦争を暴く』フレデリック・ピエルッチ、マチュー・アロン 著 荷見明子 監訳/浦崎直樹、小金輝彦、宮嶋 聡 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

2013年4月4日、著者はジョン・F・ケネディ空港に到着した飛行機内でFBIに逮捕された。10カ月前にフランスの大手企業アルストムでボイラー部門の世界責任者に昇進、これからという時に5年半に及ぶ“カフカ的不条理の世界”に放り込まれる。米国が他国に仕掛けている「経済戦争の罠」にはまったのだ。

容疑は米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)違反。10年近く前、インドネシアの発電所案件受注に際し、コンサルタントを通して政府高官に賄賂を贈ったというのだが、著者は身に覚えがない。

FCPAの特徴は域外適用規定にある。同時多発テロ後、米国は反テロ、反汚職などコンセンサスが得られている問題に関する自国の規範を、同盟国やその企業に強要している。米国外での贈収賄でも、米国の司法当局は外国企業を裁くことが可能なのだ。

著者によればFCPAは「敵、あるいは敵とみなした相手に適用し、相手を違法状態に陥らせ、最大限のダメージを与え、強制的に従わせるもの」だ。1億ドル以上の罰金を支払った26社のうち14社が欧州企業で、総額は60億ドル超。著者自身はアルストムとGEのビジネス上の争いに巻き込まれたのだ。

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