議論の整理が必要だが冷静で現実的な提案多い
評者/労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎
帯には「誰が『皆保険』から漏れ落ちているのか」とある。日本の社会保険は被用者保険を地域保険が補完する「皆保険」のはずなのに、そこからこぼれ落ちる人々がいるという問題意識だ。実際、第1章は社会保険料の未納問題を取り上げている。が、この惹句(じゃっく)のすぐ下には「正規雇用を前提としていた社会保険に綻びが生じている」ともある。本当に皆保険なら正規雇用が前提のはずはない。
これは、本来雇用形態に関わりなく全被用者を引き受けるべき被用者保険が非正規雇用を排除し、それを地域保険に押しつけてきたためだ。自営業者を想定した地域保険に無業者が増えた問題と、被用者保険を正社員保険にしてきたために非正規労働者が地域保険に押し出された問題とは、分けて論じた方がいい。今国会提出の年金法改正案が後者を一部是正しようとするものであるだけに。
これと密接に関連しながらやはり分けて論ずべきが、第2章の雇用保険だ。これもかつては非正規を排除していたが、社会保険に先んじて適用拡大をしてきた。ところが、実際の受給率は低下する一方。適用はされても受給資格要件を満たすのが難しいからだ。
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