非物質化対応に遅れた日本、脱炭素で二の舞の恐れ
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
製造業の覇者だった日本が1980年代から凋落を続けるのはなぜか。本書は変容する資本主義に日本が対応できなかった理由を解明、日本経済を公正かつ持続可能にする政策を論じる。
資本主義の根本的変化は、デジタル化やサービス化、知識経済化など「非物質化」にあるという。動きは70年代に始まり、90年代以降、急展開している。例えば世界各国で物的投資は滞るが、無形資産投資が急増した。付加価値の源泉が物的資本から無形資産にシフトしたのだ。
しかし、日本では無形資産投資は少ないままだ。ITも単なるコスト削減の手段と見誤った。顧客と迅速に結びつき、新たな付加価値を生み出すツールであることが理解できていない。製造業の経営者は「ものづくり」の現場をいまだに最重視するが、製造業もサービスで稼ぐ時代だ。製品は顧客と継続的な関係を保つための媒介で、サービス提供によって顧客満足度を高めるという発想に達していない。
現場重視といいつつ、必要な物的投資も怠り、生産設備の老朽化が目立つ。無理な受注で現場の不祥事が増えるありさまだ。付加価値の源泉たる無形資産を生み出すのは人的資本だが、人件費カットでそれも疎かなままだ。利益が出ても投資を抑制し現預金を積み上げるだけだから、消費者が欲する財・サービスの供給につながらない。評者も同様の認識だ。
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