日本の没落は回避できる、カギ握る無形資産投資
評者・北海道大学大学院教授 橋本 努
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[Profile] いわた・かずまさ/1946年生まれ。70年東京大学教養学部卒業、経済企画庁入庁。86年東京大学教養学部助教授。同教授を経て2003年から08年まで日本銀行副総裁。現在、日本経済研究センター代表理事・理事長。『国際経済学』『現代金融論』『デフレとの闘い』など著書多数。
長寿化、地球温暖化、デジタル経済化。これら3つの観点から40年後の日本社会を視野に入れ、喫緊の課題を示した警鐘の書である。
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おそらく2020年代の半ばにはインドのGDPが日本に並ぶだろう。30年頃には中国のそれが米国に並ぶ。60年になると、日本の1人当たりGDPがスロベニアに追い越されると予測される。無形資産の蓄積が進むスロベニアは全要素生産性伸び率が抜群に高い一方、日本は無形資産の蓄積がきわめて低く、その投資内容も見劣りするからだ。
いまや米国や一部の欧州諸国では、無形資産への投資が有形資産への投資を上回った。日本も早くキャッチアップすべきであり、その秘策の1つが18年にEUで導入されたデータポータビリティ権であるという。個人が企業に提供したデータを自分で取り出したり、他の企業に移したりする権利を認めれば、データ利用をめぐる企業間競争を促すことができるだろう。
あわせて19年に米カリフォルニア州知事が提案した「データへの配当」も示唆的であるとする。消費者は自分が提供したデータから生み出される富の分け前を得るべきだというこの発想をうまく制度化すれば、巨大IT企業に集中する富を、広く再分配できるかもしれない。
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