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『基点としての戦後 政治思想史と現代』 『エドワード・ホッパー 静寂と距離』ほか

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戦後の言論を総点検した労作、時を経ても輝く論客は?
評者/福井県立大学名誉教授 中沢孝夫

『基点としての戦後 政治思想史と現代』苅部 直 著(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

生命力は基本的に時間によって測られる。それは「言論」も同様だ。戦後史におけるその時々の寵児たちの言論も、時間という濾過装置によって検証される。

本書は、憲法第9条2項がはらむ問題点、平和思想の形成と変化、そして象徴としての天皇(制)の来歴など、さまざまな知識人の主張をたどりながら戦後の政治思想を論じ、現代の政治を考える上で欠かせない視点を提供する。

政治哲学者・南原繁は、本書が紹介するように、1946年、貴族院議員として「国際連合における兵力の組織は各加盟国がそれぞれ兵力を提供する義務を負うのである。日本が将来それに加盟するに際して、これらの権利と同時に義務をも放棄せんとするとするのであろうか」と述べている。以来、年月は70年を超えたが、近年の自衛隊の海外派遣、集団的自衛権などの議論は、みなその問いかけの中にあった。自分の国は他国の軍隊(国連軍)に守ってもらうが、他国の困難に関しては関わらない、といった身勝手さがそこにはあった。

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