香港での深刻な対立、統計不信から監視社会まで。現代中国の抱える問題はみな歴史に根差している。
今年6月から始まった香港での反政府デモが長期化、過激化の一途をたどっている。この問題の根源は、返還後の香港をめぐる「一国二制度」の矛盾だ。
香港人は「二制度」の維持を重視するのに対し、中国共産党はそれを例えば、植民地の遺制と見なして、「一国」化を譲らない。そこに軋轢が生じた。
[一国二制度]植民地だった香港とマカオの主権を中国が回復する際、一定期間は独自の経済・法制度の維持を認めた政策
こうした共産党の対応は、台湾との関係や少数民族の問題でも見られ、香港に限らない。目前の香港は現代中国社会の象徴であると同時に、中国史の縮図なのである。
中国の内情は極めて多様で、バラバラといってもいい。その実態を理解するには、現代をもたらした歴史を知るのが捷径(しょうけい)だ。
日本人が陥りがちな間違いは、自分たちの尺度で中国を見てしまうことだ。日本と中国は初期条件がまるで異なっている。日本の気候は比較的均一で不毛の土地がほとんどないのに対し、中国はそうではない。北方には、遊牧しか営めない草原が広がっているし、農耕が可能な地域でも、乾燥して寒冷な華北と、温暖湿潤の南方では、大きく懸け離れている。そして農耕と遊牧のせめぎ合う境界線上で生まれたのが、黄河文明である(図1)。それが発展した到達点が、秦漢帝国だった。
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