文章を理解するには「筆者の意識」に沿った筋道で読むことが不可欠だ。
筆者の立てた筋道を追うことによって、伝えたいことを正確に読み取る力が読解力である。そのために必要なのは、「他者意識」を持つことだ。文章の読み手は不特定多数の他者であり、書き手は誰が読んでも理解できるように、自分の主張を展開する。一見、感覚的に思われる文学作品も、論理的に構成されている。
読み手はその筋道を筆者の意識=他者意識で追わなければならないのだが、それをわかっていない人が多い。読解力のない人は無意識に自分勝手な解釈をしてしまう。それではどんな本を読んでも、自分の世界が広がっていかない。
そもそも日本人は他者意識を持ちにくい。それは言語の中に表れている。会話において、例えば英語では「I don't like~」のように、話し始めですぐ主語と述語、肯定文か否定文か、疑問文かを判断できる。他方、日本語は主語が省略されたり、末尾の述語まで聞かないと何を主張したいのかがわからなかったりする場合がある。それでも「これは肯定文? 否定文? 疑問文?」と考えながら話を聞くことはない。つまり聞き手が話し手との関係などから察してくれることを前提にした文化といえる。相手が察してくれない場合、「察することのできないほうが悪い」と感情的になりがちだ。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら