経済界が主張する「原発はコスト最安」の根拠が大きく揺らいでいる。
「日本の電力はさまざまな課題があり、かつその問題意識を広く共有できていないという危機感を持っていた」
日本経済団体連合会は4月、エネルギー政策に関する提言を発表し、中西宏明会長(日立製作所会長)は会見でそう述べた。提言では原子力発電所の再稼働や新増設、運転期間延長などを訴えている。
提言からは東日本大震災以降、運転を停止した原発の再稼働が思うように進まないことへの産業界のいら立ちがうかがえる。政府が昨年策定した新たなエネルギー基本計画では、2030年度に全電源に占める原子力の比率を20~22%とする目標を継続し、「重要なベースロード(基幹)電源」との位置づけを据え置いた。
だが、この原子力比率を達成するには30基程度の原発再稼働が必要。にもかかわらず震災後の新規制基準の下で再稼働できたのは9基。足元の電源構成(発電電力量)では原子力比率は約3%にとどまる。目標達成はかなり厳しいとみられている。
それでも政府が数字の見直しを行わなかったのは、発電コストは原発が最も安い(経済産業省試算)という前提があるからだ。経産省は15年に総合資源エネルギー調査会の発電コスト検証ワーキンググループで、発電方法別のコスト比較を行った。14年に発電所を建設し一定年数稼働させた後に廃炉した場合の総費用を、運転期間の総発電電力量で除している。
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