トヨタ源流企業が「テスラのEV」を買った理由 愛知製鋼トップが語る次世代技術の行く末

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藤岡高広(ふじおか・たかひろ)/1954年生まれ。1979年信州大学大学院精密工学専攻修了、トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。2006年に同社常務役員。2011年から現職(撮影:永谷正樹)

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愛知製鋼は「よきクルマは、よきハガネから」の信念のもと、エンジン向けなどを手掛けてきた特殊鋼メーカー大手で、高い加工技術が評価されている。トヨタグループの祖である豊田自動織機が自動車を始めるにあたり、1934年に設立した製鋼部がルーツだ。当時の輸入車に対抗できる国産自動車の量産化には品質の高い鉄が必要と考え、耐久性が高く切削性もある特殊鋼の製造に挑んできた。

愛知製鋼の刈谷工場(愛知県刈谷市)の一角には、トヨタ自動車創業者の豊田喜一郎氏が乗用車の試作第一号に取り組んだ場所が今も残されている。東棟と西棟を合わせて約1700平方メートルの広さがあり、そのうち東棟にガラス越しに工場内部を見られるシェルター式の見学室を設けている。見学室以外の壁や窓ガラス、床などは当時のまま残している。2018年夏から一般見学ができるようになった。

実はこの建屋は当初、取り壊す予定だった。だが、喜一郎氏の孫であるトヨタ自動車の豊田章男社長が取り壊し直前に訪れ、周囲に「創業期のオーラを感じる。このままの姿で後世まで保存したい」と伝え、解体から一転して保存へと動き出した。「まさに鶴の一声だった」と関係者は振り返る。今ではトヨタグループ関係者が多く訪れる原点回帰の“聖地”となっている場所だ。

もっとも郷愁ばかりでは生き残れない。100年に1度の変革期にある自動車業界。EV(電気自動車)など電動化が進めば、エンジンはなくなり、使用する鋼材も減る可能性がある。愛知製鋼も危機感を強めており、新素材や新技術に挑んでいる。トヨタの燃料電池車「MIRAI」向けにはステンレス鋼の部品を納めているほか、最近は自動運転支援の磁気マーカシステムなどでも存在感を出している。伝統と革新のバランスをどう両立するか。2011年から愛知製鋼の社長を務める藤岡高広氏を直撃した。

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