

「共感の壁」にどう対処 すばらしい実践の書
評者 慶応義塾大学環境学部教授 渡辺 靖
全米のリベラル派の象徴ともいうべきカリフォルニア大学バークレー校。本書は同校で長年教鞭をとったフェミニスト社会学の泰斗が南部ルイジアナ州で2011年から5年間行ったフィールドワークの賜物だ。
同州はバイブルベルトでありエネルギーベルト。政治的には保守の牙城だ。まさに「壁の向こうの住人たち」のもとをバークレーのフェミニストが訪れるのだから面白くないわけがない。
具体的な地域は、同州南西部に位置するレイクチャールズ市周辺。同地は全米有数の化学工業地帯であり、また深刻な環境汚染に伴い、がんの多発地帯としても知られる。そこに暮らす共和党支持派の白人中間層を対象に調査は行われた。
彼らの米国観を探るうえで著者が重要な「鍵穴」と位置付けたのは、なぜ公害に苦しんでいる人びとが、その元凶というべき企業への規制強化ではなく、むしろ一層の規制緩和を唱えるティーパーティ(茶会)運動を支持するのかという逆説。
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