自由貿易、所得分配の行く末を考えさせられる
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
4000年にわたるアジア優位を覆すきっかけは19世紀初頭に訪れた。これが経済史家の言う「大いなる分岐」で、西洋は農業社会から工業社会へいち早く移行、やや遅れて加わった日本を含めG7諸国はその後、世界の成長の中心となる。最大の要因は、蒸気機関の実用化でモノを運ぶコストが大幅に低下し、生産地と消費地を切り離すことが可能となったことだ。集積の進展でイノベーションが加速し、先進国に生産が一段と集中したのである。
次なる大変化は1990年代に訪れた。中国を含めいくつかの新興国が20年足らずで世界の工場となり、成長の中心に躍り出た。「大いなる収斂」が始まったのだ。労働集約的な生産工程を新興国に移し、研究開発など収益性の高い工程を自国に残すグローバル・バリューチェーンが構築されたことが背景だ。触媒はICT(情報通信技術)革命で、国境をまたぐ情報の移動コストが大幅に低下し、先進国企業が持つノウハウと新興国の低賃金を組み合わせることが可能となった。
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