大局的な空間軸と時間軸で考える
評者 慶応義塾大学環境情報学部教授 渡辺 靖
ジャーナリストの中には永田町の力学に通じた者は少なくない。逆に、海外事情に明るい者も珍しくない。ただ、その両方に詳しく、双方を有機的に語れる者となると一気に減る。とりわけ近年は、メディア環境や人事制度の変化もあり、ますます分業化しているように見受けられる。
こうした憂慮すべき現状にあって、著者の鈴木美勝氏は貴重な存在だ。約40年にわたって政局から外交安保まで幅広く取材。トレードマークの“ヒゲ”の愛称で広く親しまれる一方、同氏の見識の広さと嗅覚の鋭さには政治家や官僚、学者なども一目おく。最近まで専門誌『外交』の編集長も務め、その解説記事は好評を博した。
本書はその彼にしか書けない労作だ。
たとえば、吉田茂と岸信介は何かと対極的に描かれることが多いが、著者はどちらも“戦略的リアリズム”を共有していた点に着目する。それは(国内政局への対応能力に加えて)地政学的な目線と世界史的な視点の両方を有し、かつ双方を交叉させる能力を指す。
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