過激な提案の背後にある憂慮を真摯に受け止めよ
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
景気が悪化すると経済人は金融緩和を求める。金利低下で銀行融資が増え、企業の設備投資が回復すると期待するからだ。
現実はどうか。過去四半世紀、先進国で顕著に拡大したのは不動産関連融資や住宅ローンだ。大規模な住宅バブルが膨らみ、2007〜08年には国際金融危機が訪れた。その後、各国の中央銀行は積極的な金融緩和を進めたが、実体経済の回復は緩慢で株式や住宅など資産の価格ばかりが大きく上昇している。
本書は、過度な信用膨張に頼らない安定的な経済成長を可能にするための処方箋を論じたものだ。現代の金融システムでは過剰な信用や通貨が創造されるが、設備投資には向かわず不動産など既存資本の購入のための債務や金融取引ばかり膨らみ、バブル醸成でマクロ経済がむしろ不安定化すると警告する。
対応策として金融機関の自己資本比率の20〜25%への引き上げなど、信用膨張への厳しい規制を提案する。評者は、一般の財やサービスに関しては規制緩和が望ましいものの、金融の自由化は必ずしも経済厚生の向上にはつながらないという立場だが、本書ではにわかに同意し難い過激な規制案も飛び交う。
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