
事実関係と現場感覚が見事に結実した労作
評者 慶応義塾大学環境情報学部教授 渡辺 靖
米国研究や米国報道に携わる者で著者を知らない人はモグリだろう。知米派ジャーナリストの筆頭格として我が国の米国理解を牽引してきた。日米両国の首脳による広島や真珠湾への献花訪問を強く提唱してきたのも同氏である。
同氏の名を世間に広く知らしめたのは1971年4月の『中央公論』に寄稿した「ニクソンのアメリカと中国」と題する論考。3カ月後のキッシンジャー秘密訪中によるニクソン大統領の中国訪問の発表を予言するかのような鋭い分析だった。
幼少期を中国で過ごし、東京空襲時には米国の爆撃機を間近に見上げるという壮絶な原体験を有する著者にとって、米国と中国というのは実存的存在であり、双方のえも言われぬ複雑な関係を解き明かすことはライフワークなのだろう。
いや、そう考えなければ、御年83歳での300㌻を超える本書の執筆は説明できない。しかも、ありがちな既出の論考集でもなければ、随想録でもない。本書の書き下ろしのために約14年もの歳月をかけて、米国と中国を幾度も往復し、文献を漁り、現場を訪れ、インタビューを重ねた労作だ。事実関係と現場感覚の双方が見事に結実している。
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