分厚い知見に照らし分析してみせた良書
評者 北海道大学大学院教授 遠藤 乾
橋下徹氏からトランプ氏まで、21世紀は「ポピュリズムの世紀」となった。2017年も欧州で国政選挙が続き、その勢力の伸長は確実視されている。
本書は、もはや一過性の現象とはいえぬこのテーマをいま読み解くのに最適である。
政治史・比較政治を専門とする著者は、南北アメリカから欧州の大小国にいたるまでの、広角かつ分厚い学術的蓄積を惜しげもなく本書につぎこむ。
「エリートと人民の対比を軸とする政治運動」と定義されるポピュリズムは、カリスマ的指導者が、批判対象のエリートを飛び越え、ネットや国民投票を介して人民の不満を直接くみとる現象だ。イデオロギーは希薄で、反ユダヤ主義などの伝統的な極右とは一線を画する。既存政党が大衆と乖離し、格差が広がる中で、反グローバル化や移民排斥などを旗印に伸長した。
本書の主たるテーゼは、リベラル・デモクラシー(の先進国)なのに、ではなく、それゆえに、ポピュリズムが興隆するのだということにある。
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