公約の一気呵成の実施に意図せざる結果はないか
評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望
トランプ・ショックが続いている。多くの人は、トランプ大統領は何をしようとしているのかを不安な面持ちで見つめている。本書はトランプ大統領が書いた本である。初版は2011年で、15年に新版が出ている。初版の時点では大統領選出馬は話題になっていなかった。初版と比較はできないが、本書は大統領選用に書かれた本だろう。
本書を読んで驚いたのは、ここに書かれていることが選挙公約にそのまま掲げられていることだ。さらに驚いたのは、大統領就任後、相次いで大統領令に署名して、公約を一気呵成に実施しようとしていることだ。ホワイトハウスの報道官は、トランプ大統領ほど公約を正確に実施しようとする大統領は過去にいなかったと語っている。そういう意味で、本書はトランプ大統領の考え方、政策を知る手がかりを与えてくれる本である。
本誌の読者が関心を抱く経済政策は、レーガノミクスの焼き直しと言って過言ではない。要するに減税こそが成長の原動力だと主張する。具体的には五つの政策を掲げている。相続税の廃止、キャピタルゲイン・配当課税の引き下げ、法人税率ゼロ、海外進出企業への20%の課税、所得税率の引き下げである。最高限界所得税率を15%にまで引き下げると主張している。過激な政策だが、日本での議論と比較してみるのも面白い。
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