Robert Boyer●米州研究所(仏パリ)エコノミスト。1943年生まれ。仏パリ理工科大学校(エコール・ポリテクニック)卒業。仏数理経済計画予測研究所、仏国立科学研究所の教授、仏社会科学高等研究院研究部長を経る。著書に『資本主義vs資本主義』『レギュラシオン』など。
経済成長と両立する福祉制度を模索
評者 橋本 努 北海道大学大学院教授
フランスでレギュラシオン学派について報告する際は「レギュラシオンとは何か」について一から説明する必要があるけれども、日本ではその必要がない。というのも日本人の多くはこの学派について知っているから、という話をフランス人から聞いたことがある。
日本でこそ有名なレギュラシオン学派であるが、これまで不平等の問題には正面から取り組んでこなかった。本書はその最初の成果であろう。
「不平等」は自然発生するのではなく、政治・経済的な諸要因が複雑に絡み合って帰結する。要因は国ごとに多様であり、しかも相互に依存している。ゆえに不平等化は、一つのパターンに収斂するわけではないというのが本書の視点である。米国における金融主導型の蓄積レジームと不平等の拡大は、簡単には他国に広まらない。可処分所得に比した株式資産やキャピタルゲインの割合は、日本・ドイツ・フランスでは依然として低いのである。
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