米国政治の「裏の資金」の流れを緻密な取材で暴く
評者 東洋英和女学院大学客員教授 中岡 望
米国は政治の国である。選挙は一大イベントで、膨大な資金が投入される。昨年の大統領選挙で候補者が集めた政治献金は合計で15億ドル、政治団体を通して集めた献金額は6億ドルを超えている。富豪は最大の政治献金者である。保守派の代表格は企業経営者のコーク兄弟であり、リベラル派の代表は投資家のジョージ・ソロス氏である。彼らは「政治的フィランソロピー」と呼ばれている。
政治献金を表のマネーとすると、「ダーク・マネー」と呼ばれる決して表面に出ない裏のマネーの流れもある。膨大な額のダーク・マネーを操り、自己の保守的な政治的信条の実現を図っているのが、コーク兄弟である。コーク兄弟はそれぞれ『フォーチュン』誌の富豪リストの10位以内に入る富豪だ。コーク兄弟は「影のキング・メーカー」と呼ばれることもある。
コーク兄弟は自らの資金を使うだけでなく、富豪中の富豪から集めた巨額の資金を使って、米国社会に“コクトパス”と呼ばれるネットワークを作り上げている。コーク兄弟の政治活動は「地下に潜っている」といわれるように、その実態は闇の中であった。しかし、最近、コーク兄弟のダーク・マネーに関する報道も増え、その姿の一端が明らかになっている。たとえば保守派の草の根運動であるティーパーティ運動の背後に、コーク兄弟がスポンサーとして存在していることは周知の事実となっている。
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