未体験世代に向けた現場担当者による体験論
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
最近、平成バブルとその崩壊の時代を描いた書籍が増えている。著者は1979年に日本銀行に入行。80年代後半から90年代初めは、30歳代前半の中堅以前の日銀マンとして政策中枢ではなく現場で奔走した。本書はバブルを知らない世代に、当時をわかりやすく論じた体験的バブル論だ。目を引くのは、あまり語られることのなかった日銀の窓口指導とバブルの関係やバブル崩壊の引き金となった大蔵省の総量規制について、一担当者の目から描かれている点だ。
バブル膨張の背景として、80年代後半の「FS戦争」と呼ばれる上位都市銀行の熾烈な融資拡大競争の存在が知られている。著者は当時、日銀営業局でそれらの銀行を担当する。窓口規制は、主要銀行に対し融資増加額を一定範囲に抑えるよう指導するものだが、折からの金融自由化もあり、日銀は各行の自主的計画を尊重していたため、金融政策の中ではあまり語られてこなかった。しかし本書は、窓口規制が金融機関の横並び意識を強め、融資増大を助長、バブル膨張の遠因になったと論じる。
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