
米大統領選を舞台に描かれた米国社会の変貌
評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴
本書は、昨年の米国大統領選挙のプロセスをエッセー風に描く中で、現代米国の政治・社会の変貌への注意喚起を促した好著である。大統領選をめぐる政治ドラマの中に、今日の米国社会がすでにこれまでの社会構造や論理では機能していないことをえぐり出す。著者が指摘しているように、レーガン大統領が確立した共和党政治の「ゲーム盤」そのものが変わってしまった。同時に、それは米国に限らないことを、ブレグジット(英国のEU離脱)などに触れることで明らかにする。
著者は、トランプ氏による勝利の大きな理由の一つに「フリーメディア」を利用したコミュニケーション戦略を挙げる。テレビ、ツイッター、それにセレブリティ世界(トランプ氏は自らのテレビ番組を通じて有名人であった)を用いて人心をつかんだと分析する。「トランピズム」と呼ばれる保護貿易、排外主義、反エリート主義などは一般には民主主義的な価値観に反するが、米国社会の不満分子の間に支持を広げていった。
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