
もりのぶ・しげき●中央大学法科大学院教授。東京財団上席研究員、ジャパン・タックス・インスティチュート所長、財務省財務総合政策研究所特別研究官。1950年生まれ。京都大学法学部卒業、大蔵省入省。主税局総務課長、東京税関長、財務総合政策研究所など歴任。
持続可能な制度の再構築を探る
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
アベノミクスによる円安と株高で企業の景況感は確かに改善した。しかし、肝心の家計の財布のひもは固いままだ。背景には経済格差の拡大もある。グローバリゼーションに対応するため、1990年代以降、企業は生産量やコストの迅速な調整を可能とすべく非正規雇用を大幅に増やした。しかし、それはマクロ的なショックが生じた場合、社会で最も弱い階層へ調整圧力が集中することを意味していた。
消費税率10%への増税を含む「税と社会保障の一体改革」に期待されていたのは、単に、膨張する高齢者向けの社会保障費の財源確保だけではなかったはずだ。経済構造の変貌に対応し、非正規雇用向けのセーフティネットを新たに構築し、世代にかかわらず、支援を要する人をサポートする制度への移行が望まれていたが、未だ手付かずだ。
本書は、税制の専門家が、日本を再生するために真に必要な税と社会保障の一体改革を論じたものだ。単なる財政再建論とは一線を画す。税制というと難解な議論に陥りがちだが、対談形式で問題点を炙り出しわかりやすく解説してくれる良書だ。
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