かつて米国のイラク戦争に「ノン」を突き付けたフランスは、単なるイスラム恐怖症になり下がったのか──国際政治の専門家2人が共同で提言する。
Hubert Vedrine●1981年から95年にかけ大統領府(ミッテラン大統領)で外交顧問などを歴任。97年から2002年までシラク大統領下のジョスパン内閣で外相。
パスカル・ボニファス 国際関係戦略研究所所長
Pascal Boniface●1991年、国際関係戦略研究所設立。専門は国際関係論で、特に地政学的アプローチが特徴。パリ第8大学ヨーロッパ研究所でも教鞭を執る。
フランスは歴史的に、世界の中で高い名声を得てきた国だ。啓蒙思想家やフランス革命、人権宣言を生み、洗練された文化を誇っていた。
最近までこの伝統は変わっていなかった。2003年に、当時のシラク仏大統領は米国のイラク戦争への参戦を拒否し、国際社会におけるフランスの名声を高めた。国際法を順守し、国際関係における戦争の違法性を糾弾する姿勢を明確にしたからだ。
米国という超大国に対して、きっぱりと異論を突き付けたフランスの姿勢を、世界は勇敢で明晰だと評した。フランスは米国の同盟国であっても、米国のいいなりにはならないという独立の気概を示したのだ。イラク戦争はフランスが警告したとおりの末路を迎えた。
ところが今や、こうしたフランスの名声が失われつつある。長期にわたる経済の停滞、高い失業率をはじめ、多くの政治的・社会的問題に直面している。これらの問題には抜本的な対策が必要だ。国としての魅力はたくさんあるのに、フランスは世界の中でもとりわけ悲観的な国になった。
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