米国のトランプ大統領には、これまでの政治指導者にはあまり見られなかった特徴がある。政策判断の基になる「事実」を都合のいいように解釈し、自らの政策に利用しようとするのだ。
たとえばイランやシリアなど中東・アフリカ諸国(当初は7カ国、その後6カ国)からの入国について「テロリストを入れないため」として規制する大統領令を出したが、実際にはその国々からの入国者による米国内でのテロ事件は起きていない。
経済面でも、トランプ氏は日本から米国への自動車輸出が米国の雇用を奪っていると批判しているが、これも事実に反する。日本の自動車メーカーは米国工場での生産を増やして雇用創出に貢献している。トランプ流の「独自の事実」は欧州の右派勢力にも通じる手法だ。こうした政治潮流が広がるのを防ぐためにも、政治家の発言をメディアが点検する「ファクトチェック(事実確認)」が重要になっている。
トランプ氏は最近も事実に基づかない発言を繰り返している。大統領選挙期間中に当時のオバマ大統領がトランプ氏を盗聴していたと非難し、連邦議会に事実関係の調査を求めた。しかし、共和、民主両党の議会代表者が連名で「盗聴の事実は認められない」と回答。CIA(米国中央情報局)やFBI(米国連邦捜査局)も真っ向から否定しており、どう見ても事実とはいいがたい。
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