有料会員限定

対決姿勢を示す前に中国の意図を見抜け 中印戦争でのインドが教訓

✎ 1〜 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 最新
拡大
縮小
航海中の空母「遼寧」。中国は海洋戦略を長期的な視点から進める(AFP=時事)

特集「自衛隊のカネと組織」の他の記事を読む

現在、日本と中国の安全保障関係を見ると、1962年10月から約1カ月間、中国・インド間で大規模な武力衝突となった中印戦争が浮かんでくる。同戦争が勃発する前の状況が、現在の日中間の状況に非常に似ているためだ。

中印戦争の結果はインドの惨敗であり、しかも同国の国際的地位の凋落を招いた。日本では中印戦争を「平和愛好国家インドに対し、領土的野望に駆られた中国が一方的に侵略した」と理解されがちだ。しかし、実態は大いに異なる。先に手を出したのは、インドだった。

中印間の領土と主権の問題は20世紀初頭、中華民国と大英帝国領インドの時代が発端であり、当時も未解決状態だった。主権問題はチベットをめぐってのものであり、領土紛争は主として東部・西部地域で発生していた。57年、西部の係争地域に戦略道路を忽然と建設したのは中国だった。そして、東部地域の両国暗黙の境界線を越えて軍事力を展開し発砲したのはインドだった。

さらに59年にチベットのダライ・ラマ14世がインドに亡命して以来、インドは一貫して彼の亡命政権を庇護した。これは、中国側の尺度に照らせば、近代中国革命の命題たる「中華天下恢復(かいふく)」を根源的に脅かすものだった。すなわち、「中華の分裂」をインドは扇動したことになる。インドの一連の行為は、中国側からすれば武力行使を発動できる要件を満たしたのである。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
自衛隊のカネと組織
オスプレイ、イージス艦、ステルス機...
国内外で日本企業の技術を応用
問題が多すぎる防衛省の調達
川崎重工、三菱重工、IHI...
▶▶Part3 防衛産業と装備
米国が同盟国に向ける視線
中印戦争でのインドが教訓
中国人民解放軍はどこまで強いのか
北朝鮮によるミサイル発射
▶▶Part2 緊迫の周辺情勢/中国・北朝鮮の脅威
緊迫の周辺情勢/中国・北朝鮮の脅威
[対談] 伊勢崎賢治×伊藤祐靖
モンスターペアレントも悩みの種
全自衛隊で配置制限が撤廃でも
最終ゴールは3人の幕僚長
現役&OB 自衛官 座談会
内部争いが絶えない国防の砦
▶▶Part1 自衛隊という組織
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内