王子、異例のツートップ体制の狙い 会長と社長がグループ共同CEOに就任

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また、国内では15年にかけて、バイオマスや太陽光など発電事業が拡大、伊藤忠エネクスとの合弁による電力小売り事業も1月に設立予定だ。「(12年の)社長就任時に抱負として掲げた海外ビジネスの拡大、電力事業の進出は結構進んだと思うし、まだまだ拡大していく余地がある」と進藤氏は胸を張る。

一方で、積極的な拡大投資の結果、王子の有利子負債は、進藤氏の社長就任直前の12年3月末の7847億円から、直近14年9月末には8445億円まで増えた。新社長に就任する矢嶋氏は、「今までは投資を重点的にやってきた。この姿勢は崩さないが、これから世の中がどうなるかわからないこともあり、有利子負債の削減も図っていきたい」と表明。経理畑・管理畑が長かった経験を生かし、矢嶋氏は拡大のための積極投資だけでなく、有利子負債削減による財務体質強化にも力を注いでいく公算だ。

「もはや製紙企業ではない」

国内外で王子が急激に事業領域を拡大させてきた背景には、国内製紙業界が右肩下がりで減退していくことへの強烈な危機感がある。国内市場では「紙を必要としないIT化と少子高齢化で、1人当たりの紙・板紙消費量はこれからも非常に厳しい状況が想定される」(矢嶋氏)からだ。

さらに、足元での特殊要因として、今年4月の消費増税前に印刷用紙が小売店や不動産などのチラシ向けに大きく伸びた反動減がいまだに響いているうえ、急速な円安に伴い輸入原材料のチップが高騰したことも製紙会社の利益を圧迫している。

製紙業界に吹きつける逆風を早くから懸念していた王子が取り組んできたのが、”脱・製紙会社化”ともいえる国内外での事業領域拡大だ。積極投資のみならず有利子負債削減を重視する矢嶋氏も、「『もはや製紙企業ではない』と自他共に認められるようなグループになりたいということが、私の社長就任の抱負」と断言する。

1月から発足するツートップ体制の中では、進藤新会長が積極投資の推進役となり、矢嶋新社長が財務体質強化の推進役といった形で棲み分けるのか。それとも、新会長と新社長が、それぞれ積極投資と財務体質強化のバランスを取った経営を推進していくのか。製紙業界では異例の新体制の真価が評価されるまでには、まだしばらく時間が掛かりそうだ。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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