著書『病院で死ぬということ』を上梓した1990年当時、病院での終末期医療は大変な状況だった。一分一秒でも患者の命を延ばす“延命至上主義”を当然とする医療システムの中で、悲惨な最期を迎える患者を数多く見てきた。
その後、私はホスピス医に転じた。心身の苦痛を緩和し、その人らしさをチームで支える。われわれの取り組みを、患者も家族も評価してくれたが、「本音を言えば家にいたかった」との声があったのも事実だ。当時は、そういった気持ちをただただ受け止めるしかなかった。
だが、やはり「限られた生を、自分の思いどおりに生きたい」という患者の気持ちに応えたい。ホスピスで待っているのではなく、看護師などとチームを組んで地域に出向こう。こうしてケアタウン小平チームの、在宅ホスピスケアの取り組みが始まった。2005年のことだ。
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これまで700人を看取ってきた。現在診ている患者は80人ほど。70代が多く、約4割が終末期がん、残り6割が脳卒中の後遺症で寝たきりなど、がん以外の慢性疾患だ。がん患者の半数は、チームがかかわって1カ月ほどで亡くなってしまう。慢性病の場合は3年、5年とお付き合いしている人もいる。
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