有料会員限定

700人を看取った在宅医からの終末期報告 700人を看取った在宅医からの終末期報告

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 最新
拡大
縮小

著書『病院で死ぬということ』を上梓した1990年当時、病院での終末期医療は大変な状況だった。一分一秒でも患者の命を延ばす“延命至上主義”を当然とする医療システムの中で、悲惨な最期を迎える患者を数多く見てきた。

その後、私はホスピス医に転じた。心身の苦痛を緩和し、その人らしさをチームで支える。われわれの取り組みを、患者も家族も評価してくれたが、「本音を言えば家にいたかった」との声があったのも事実だ。当時は、そういった気持ちをただただ受け止めるしかなかった。

だが、やはり「限られた生を、自分の思いどおりに生きたい」という患者の気持ちに応えたい。ホスピスで待っているのではなく、看護師などとチームを組んで地域に出向こう。こうしてケアタウン小平チームの、在宅ホスピスケアの取り組みが始まった。2005年のことだ。

東京郊外の「ケアタウン小平」。クリニックや訪問看護ステーション、デイサービスも。定期的な会議で看護師などと患者の状況を共有

特集「納得のいく死に方 医者との付き合い方」の他の記事を読む

これまで700人を看取ってきた。現在診ている患者は80人ほど。70代が多く、約4割が終末期がん、残り6割が脳卒中の後遺症で寝たきりなど、がん以外の慢性疾患だ。がん患者の半数は、チームがかかわって1カ月ほどで亡くなってしまう。慢性病の場合は3年、5年とお付き合いしている人もいる。

関連記事
トピックボードAD
連載一覧
連載一覧はこちら
トレンドライブラリーAD
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
特集インデックス
納得のいく死に方 医者との付き合い方
土井丈朗・慶応義塾大教授が医療費問題を斬る
厚労省、WHOも経験した濃沼信夫教授に聞く
患者急増、医療の人材難、財源不足の三重苦
あなたなら「終の住処」はどこを選びますか
65歳以上の患者に年間1.6兆円の医療費
このままでは「姥捨山」の復活しかなくなる
1日10種類以上の薬を飲んだら副作用が心配
健康なくせに幸せでない高齢者が増えている
日本の薬の使われ方は世界的に見ても非常識
検診だけ異常あり、寿命のほうが早いリスクも
『週刊現代』医療キャンペーン記事の教訓とは
東大特任准教授に「人生の最終段階」を聞く
特別養護老人ホーム医師が納得いく最期を提言
「死の質」ランキングで堂々の世界トップ獲得
日本医師会、横倉会長に終末期医療を直撃
いつから終末期? 延命治療やめたら殺人罪?
700人を看取った在宅医からの終末期報告
上野千鶴子氏が語る「おひとりさまの最期」
病院から自宅まで、死と向き合う人々の肉声
超高齢社会に突入する医療大国日本への処方箋
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT
有料法人プランのご案内