岩井 克人 国際基督教大学客員教授
英国のEU(欧州連合)離脱によって世界はどう変わるのか。資本主義のあり方や欧州統合に与える影響とは──。理論経済学の大家である岩井克人・国際基督教大学客員教授に聞いた。

いわい・かつひと●1947年生まれ。東京大学経済学部卒業、72年米マサチューセッツ工科大学経済学部大学院博士号取得。米イェール大学助教授、東京大学教授などを経て現職。東京財団名誉研究員。近著に『経済学の宇宙』など。(撮影:梅谷秀司)
私は英国のEU離脱は、冷戦以降英米が主導してきたグローバル資本主義の転換点になると考えている。
なぜか。もともとグローバル資本主義は1980年代に入り、サッチャー英首相やレーガン米大統領らが先導して進めた。政府の役割を最小限に減らし規制緩和や自由貿易を推進することで、国民所得を増やし、市場の安定性を高めるという考え方である。
89年にベルリンの壁が崩壊し、旧ソ連も消滅したことで、英米型のグローバル資本主義は独り勝ちの状態となった。しかし、そこには格差拡大という落とし穴があった。

英国ではボリス・ジョンソン氏が率いたEU離脱派が勝利し、米国ではドナルド・トランプ旋風が巻き起こり、民主社会主義者を名乗るバーニー・サンダース氏が多くの支持を集めた。いずれも底流にあるのは格差問題だ。すなわちグローバル資本主義の恩恵にあずかるエリート層に対し、困窮を強いられる非エリート層の反発が強まっているのだ。
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