しみず・まさと 日本経済新聞経済解説部編集委員。1964年生まれ。東京大学法学部を卒業。日本経済新聞社に入社。政治部(首相官邸、自民党、公明党、外務省などを担当)、経済部(大蔵省などを担当)、ジュネーブ支局長などを経て、2004年から現職。
「予算政治」の四半世紀を鮮明に描く
評者 上智大学経済学部准教授 中里 透
去年の今頃は消費税率の10%への引き上げをめぐって、永田町が大きく揺れていた。この問題は再増税の延期と衆議院の解散総選挙という形で決着をみたが、予算や税の取り扱いは時として内閣の命運を左右する大きな問題となる。本書はこのような「予算政治」の四半世紀にわたる経過を鮮明に描く。
あらためて言うまでもなく、かつての大蔵省は衆目の一致する「最強官庁」であった。だが、バブル崩壊と政治改革の流れの中で、大蔵省は1990年代に大きな危機に直面することとなる。
大蔵省はなぜ追いつめられたのか。その理由の一端は、不良債権問題への対応の過程で厳しい批判にさらされたことにある。住専(住宅金融専門会社)処理のための公的資金の投入は、世論の強い反発を招いた。東京協和信用組合と安全信用組合の二信組事件に関連して発覚した大蔵省幹部の過剰接待問題は、「最強官庁」の権威と信用を大きく傷つけた。もう一つの理由は、永田町に行革を旗印とするさまざまな「改革派」が出現し、大蔵省改革が大きな政治課題となったことだ。こうした中で銀行局と証券局の所掌事務の大半を総理府(現内閣府)に移管する「財金分離」が行われ、大蔵省は「解体」された。
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