バブル醸成の綱渡り策は いつまで継続可能か
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
ITバブル崩壊後、米国の中央銀行は積極緩和を進めサブプライムバブルにつながった。その崩壊でリーマンショックが訪れると量的緩和を採用し、新興国バブルと資源バブルの醸成で世界経済は何とか持ち直した。
バブル崩壊を新たなバブルの醸成で凌ぐ綱渡りが続けられて久しいが、この先送り策はいつ開始されたのか、いつまで継続可能か。本書は現代資本主義国家が直面する金融危機、財政危機、経済危機をマルクス経済学の流れを汲むドイツの著名な政治経済学者が分析したものだ。
戦後の高成長が終わった1970年代初頭、各国は金融緩和で賃上げを実現しようと苦戦。結局、スタグフレーションに突入する。インフレ抑制の過程では雇用が著しく悪化し、拡張財政で対応することで今度は公的債務が膨張した。金融自由化の下、財政再建と金融緩和を進めて結局、国家債務の家計債務への付け替えを助長し、この過程で生じたのがサブプライムバブルだ。その崩壊後、全面的な危機の回避のため、各国中央銀行が進めたのが量的緩和だった。
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