今年4月23日、中国政府の招きで北京を訪れた米国の政治学者、フランシス・フクヤマと日本の経済学者の青木昌彦(7月に逝去)は意外な人物の歓迎を受けた。
中国共産党中央規律検査委員会(中規委)書記の王岐山だ。王は7人の最高指導部メンバー、党中央政治局常務委員の一人。国家主席の習近平にとっては青年期から酒を酌み交わし、中国の未来を語り合った刎頸(ふんけい)の友である。党中央弁公庁主任の栗戦書と並ぶ側近中の側近だ。
国際金融のスペシャリストとしてキャリアを重ねてきた王は、欧米にも知己が多い。それだけに、経済関係のポストではなく党員の規律違反を取り締まる中規委のトップという人事は意外感を持って受け止められた。だが、就任後は習政権の看板政策である「反腐敗運動」の陣頭に立ち、前常務委員の周永康など多くの大物をやり玉に挙げてきた。
今や王の存在感は首相の李克強をも上回り、事実上のナンバー2。彼の言動は中国の近未来を知るうえでも非常に重視されている。だが、汚職摘発機関のトップという職務の性格上、公的な会議以外で彼の肉声が外に漏れ出すことは極めてまれだ。
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